「『前向きに検討いたします』の真意を見抜き、商談成約率を劇的に上げる極意大全」

「前向きに検討いたします」の本当の意味|社交辞令か脈ありか

「ありがとうございます。前向きに検討いたします」。ビジネスの交渉や提案の場で、この一言が発せられた瞬間、空気は期待と不安が入り混じった独特のものに変わります。この言葉は、相手の提案を無下に断ることなく、かつ安易な即決も避けるための、非常に洗練された日本語のクッション言葉です。しかし、その便利な響きの裏で、「これは脈ありのサインなのか、それとも丁寧な断り文句、いわゆる社交辞令なのか」と、多くのビジネスパーソンが頭を悩ませています。このセクションでは、「前向きに検討いたします」という、曖昧でありながらもビジネスに不可欠なフレーズの本当の意味を、その言葉が持つ二面性や、使われる背景から深く掘り下げて解説していきます。

この言葉が持つ「肯定的」と「保留」の二つの側面

「前向きに検討いたします」という言葉の核心を理解するためには、それが持つ二つの側面、すなわち「肯定的な姿勢」「決定の保留」を同時に認識する必要があります。この二面性こそが、このフレーズを複雑で、かつ便利なものにしているのです。

まず「肯定的な姿勢」とは、文字通り、相手の提案や意見に対して、敵対的ではなく、好意的に、そして真剣に受け止めているという意思表示です。「前向きに」という言葉が、単なる「検討します」とは一線を画す重要な要素です。「あなたの提案には価値があると感じています」「無視するのではなく、真剣に考えるテーブルに乗せました」というメッセージを相手に伝えることで、その場の雰囲気を和らげ、相手の面子を保ち、良好な関係を維持する効果があります。これは、即座に「ノー」と答えるよりも、はるかに建設的なコミュニケーションと言えるでしょう。

一方で、「決定の保留」とは、現時点では「イエス」とは言えない、という明確な意思表示でもあります。「検討いたします」という言葉が、その場で結論を出すことを避け、判断のための時間を確保する役割を担っています。その背景には、「自分一人の判断では決められない」「社内に持ち帰って、上司や関連部署と協議する必要がある」「コストやリスクを精査する時間が必要だ」といった、ビジネスにおける正当な手続きや慎重な判断プロセスが存在します。したがって、この言葉は、決して「承認」や「約束」を意味するものではなく、あくまで「検討のスタートラインに立った」という段階を示す言葉なのです。この「肯定的」でありながら「保留」でもあるという絶妙なバランスが、このフレーズの神髄と言えます。

なぜビジネスでは曖昧な表現が使われるのか?

明確さとスピードが求められるビジネスの世界で、なぜ「前向きに検討いたします」のような、一見すると曖昧な表現が多用されるのでしょうか。その背景には、複雑な人間関係や組織の意思決定プロセスを円滑に進めるための、日本的なコミュニケーションの知恵が隠されています。

第一の理由は、関係性の維持です。ビジネスは、一度きりの取引で終わることは稀です。将来にわたって良好な関係を築くためには、相手の提案を頭ごなしに否定し、その場の空気を悪くすることは得策ではありません。たとえ現時点では受け入れられない提案であっても、「前向きに検討いたします」と一旦受け止める姿勢を見せることで、相手の面子を保ち、「今回はダメだったが、次の機会に繋がるかもしれない」という可能性を残すことができます。これは、長期的な視点に立った、高度な関係構築のテクニックなのです。

第二に、組織としての意思決定の必要性です。多くの場合、ビジネスの現場担当者は、その場で全ての決定を下せる権限(決裁権)を持っていません。上司への報告、法務部や経理部との調整、役員会の承認など、正式な決定には複数のステップが必要です。その場で安易に「やります」と答えてしまい、後から「社内で承認が下りませんでした」となる方が、よほど相手の信頼を損ないます。「前向きに検討いたします」という言葉は、この社内での正規の検討プロセスを経るための時間を確保する、という誠実な意思表示でもあるのです。

第三に、交渉における戦略的な時間稼ぎという側面もあります。相手の提案に対して即答を避け、一度持ち帰ることで、冷静にそのメリット・デメリットを分析したり、より有利な対案を練ったりする時間を稼ぐことができます。また、相手に「こちらも真剣に考えている」という姿勢を見せることで、相手からのさらなる譲歩を引き出しやすくなるという、交渉上の駆け引きの要素も含まれているのです。

「前向きに検討」は事実上の断り文句(脈なし)なのか?

多くの人が最も知りたいのは、「『前向きに検討いたします』は、結局のところ、丁寧な断り文句、つまり『脈なし』のサインなのか?」という点でしょう。この問いに対する答えは、残念ながら「イエスでもあり、ノーでもある」というのが実情です。その真意は、言葉そのものよりも、それが発せられた状況、相手の表情や声のトーン、そしてその後の行動に隠されています。

「脈なし」の可能性が高いケース:
・具体的な質問が一切なく、一方的に話を聞いているだけだった場合。
・「いつまでに回答します」という、具体的な期限の提示がなかった場合。
・表情が硬く、社交辞令として言っているのが明らかだった場合。
・「貴重なご意見として、参考にさせていただきます」といった、他の曖昧な言葉とセットで使われた場合。
このような場合は、残念ながら、関係を悪化させないための、丁寧なお断りの言葉である可能性が高いと考えられます。

「脈あり」の可能性が高いケース:
・提案内容について、具体的な質問(例:「この場合の費用は?」「導入までのスケジュールは?」)が次々と出てきた場合。
「〇〇という点がクリアできれば、非常に魅力的ですね」など、具体的な課題や評価のポイントに言及があった場合。
・「社内の〇〇という部署にも話を通してみます」「来週中には、一度、中間報告をさせていただきます」など、具体的な次のアクションや期限が示された場合。
・話している相手の表情が明るく、本当に興味を持っている様子が伺えた場合。

このように、相手が本当に「前向き」である場合は、その言葉の後に、必ず何らかの具体的なアクションや質問が伴います。言葉そのものに一喜一憂するのではなく、その周辺情報から相手の真意を冷静に読み解く観察眼が、ビジネスパーソンには求められるのです。

【状況別】「前向きに検討いたします」の心を掴む使い方と文例30選

「前向きに検討いたします」というフレーズは、その曖昧さゆえに、使う状況や相手によって、その響きと効果が大きく変わります。相手に誠意を伝え、次のビジネスチャンスに繋げるためには、状況に応じた適切な使い方をマスターすることが不可欠です。ここでは、ビジネスの様々な局面を想定し、相手の心を掴む効果的な使い方を、具体的な文例30選としてご紹介します。

相手からの提案や見積もりに対する返答の文例

取引先から受けた提案や見積もりに対し、その場で即決できないが、好意的に受け止めていることを伝える、最も基本的な使い方です。

文例1:「ご提案いただき、誠にありがとうございます。内容を拝見し、前向きに検討いたします。」
文例2:「御見積書、確かに拝受いたしました。社内で協議の上、前向きに検討いたします。」
文例3:大変魅力的なご提案ですので、ぜひ前向きに検討いたします。つきましては、〇〇の点について、もう少し詳しくお伺いできますでしょうか。
文例4:「ありがとうございます。まずは、ご提示いただいた内容で、前向きに検討を進めさせていただきます。」
文例5:「素晴らしい企画書ですね。すぐにでも始めたいところですが、まずは予算の確認が必要です。前向きに検討いたしますので、少しお時間をいただけますでしょうか。」

採用面接の場で応募者へ伝える際の文例

採用面接で、その場での合否は伝えられないが、応募者に対して良い印象を持っていることを示唆し、期待を持たせる際に使います。

文例6:「本日はありがとうございました。鈴木 一朗さんのご経験は、弊社にとって非常に魅力的です。社内で慎重に協議し、前向きに検討いたします。」
文例7:「素晴らしい自己PRでした。ぜひ、前向きに検討いたします。結果につきましては、一週間以内に改めてご連絡いたします。」
文例8:ぜひ、次の選考に進んでいただきたいと考えております。今後のプロセスについて、前向きに検討いたしますので、今しばらくお待ちください。
文例9:「本日の面接でのご発言、大変参考になりました。ご縁がございましたら嬉しく思います。前向きに検討いたします。」
文例10:「他の候補者の方との兼ね合いもございますので、即答はできかねますが、本日のお話の内容は、非常にポジティブに受け止めております。前向きに検討いたします。」

価格交渉や条件交渉を保留する際の文例

相手からの価格提示や条件に対し、即座に「ノー」とは言わず、交渉の余地を残しながら、一旦持ち帰る際に使います。

文例11:「ご提示いただいた価格、承知いたしました。この条件で契約できるよう、社内調整を含め、前向きに検討いたします。」
文例12:「その納期ですと、弊社としてはかなり厳しいのが実情です。しかし、何とかご期待に沿えるよう、前向きに検討いたします。」
文例13:大変恐縮ですが、この価格では、弊社の予算を少しオーバーしてしまいます。もし、〇〇円までご調整いただけるようでしたら、ぜひ前向きに検討いたします。
文例14:「その条件は、弊社にとって前例のないものです。しかし、貴社との関係を考慮し、特例として対応できないか、前向きに検討いたします。」
文例15:「一度持ち帰らせていただき、費用対効果を精査した上で、前向きに検討いたします。」

社内での企画や提案に対する上司からの返答文例

部下からの企画や提案に対し、その場で承認はできないが、そのアイデアを評価していることを伝え、部下のモチベーションを維持するために使います。

文例16:「面白いアイデアだね。すぐに承認はできないが、前向きに検討しよう。」
文例17:「よくここまで調べてくれた。この企画の実現可能性について、関係部署と協議の上、前向きに検討する。」
文例18:君の熱意はよく分かった。この件、役員会にかけることを前提に、前向きに検討しよう。いくつか懸念点を潰す作業を手伝ってほしい。
文例19:「この視点はなかったな。素晴らしい。プロジェクト化できるか、来週までに一度、前向きに検討して返事をするよ。」
文例20:「予算の問題さえクリアできれば、非常に良い提案だ。資金調達の方法も含めて、前向きに検討してみよう。」

顧客からの要望やクレームに対する一次回答の文例

顧客からの難しい要望や、すぐには対応できないクレームに対し、まずは相手の意見を受け止める姿勢を見せるために使います。

文例21:「この度は、ご不便をおかけし申し訳ございません。ご要望の〇〇という機能につきまして、今後の開発項目として、前向きに検討いたします。」
文例22:「貴重なご意見、誠にありがとうございます。頂きました内容につきまして、社内で共有し、サービスの改善を前向きに検討いたします。」
文例23:〇〇様のご要望、真摯に受け止めさせていただきます。すぐにお約束はできかねますが、実現できるよう、最大限、前向きに検討いたします。
文例24:「そのようなご不満があったとのこと、大変失礼いたしました。代替案をご提示できないか、部署内で前向きに検討いたします。」
文例25:「規定上、難しいのが実情ではございます。しかし、何とかお力になれる方法がないか、特例としての対応を前向きに検討いたします。」

M&Aや業務提携など大型案件での慎重な返答文例

会社の将来を左右するような、重大な案件に対する返答では、最大限の慎重さが求められます。その際の、丁寧かつ含みを持たせた表現として使われます。

文例26:「この度は、業務提携という、大変光栄なご提案をいただき、誠にありがとうございます。弊社といたしましても、貴社との協業には大きな可能性を感じております。ぜひ、前向きに検討を進めさせていただければと存じます。」
文例27:「ご提示いただいた買収条件、拝見いたしました。取締役会にて慎重に審議の上、前向きに検討いたします。」
文例28:「本件が、両社の発展に大きく寄与するものであるという認識は、我々も同じです。デューデリジェンスの結果を踏まえ、前向きに検討いたします。」
文例29:「まずは、秘密保持契約を締結させていただき、より詳細な情報交換をさせていただければと存じます。その上で、本件、前向きに検討いたします。」
文例30:本件、弊社の中期経営計画とも合致する、非常に興味深いご提案です。まずは、ワーキンググループを立ち上げ、具体的なシナジー効果の検証から、前向きに検討を始めたいと存じます。

「前向きに検討いたします」と言われた時の正しい対応と真意の見抜き方

自分が使う側ではなく、相手から「前向きに検討いたします」と言われた時、どのように対応すれば、その言葉を社交辞令で終わらせず、次の具体的なアクションに繋げることができるのでしょうか。相手の言葉に一喜一憂するのではなく、冷静に真意を見抜き、戦略的にフォローアップすることが、ビジネスの成功確率を大きく左右します。ここでは、そのための具体的な方法とテクニックを解説します。

まずは感謝を伝え、相手の立場を尊重する

相手がどのような意図で「前向きに検討いたします」と言ったにせよ、まずは、検討のテーブルに乗せてくれたこと自体に、感謝の意を伝えるのが、ビジネスパーソンとしての基本的なマナーです。

「お忙しい中、ご検討いただけますこと、誠にありがとうございます。」
「前向きにご検討いただけるとのこと、大変嬉しく思います。」

このように、まずはポジティブな反応を返すことで、相手も「話を聞いて良かった」と感じ、その後のコミュニケーションが円滑になります。ここで、「本当ですか?」「いつお返事いただけますか?」などと、前のめりに相手を問い詰めるのは禁物です。相手には相手の都合や、社内での手続きがあります。その立場を尊重し、「もちろん、社内でのご検討にお時間が必要かと存じます」と、相手を気遣う一言を添えることで、あなたは「配慮のできる、信頼できるパートナーだ」という印象を与えることができます。

「脈あり」か「脈なし」か?相手の真意を探るための質問術

感謝を伝えた後、次のステップは、相手の言葉の「本気度」を探ることです。しかし、ストレートに「それって、本当ですか?」と聞くわけにはいきません。ここでは、相手にプレッシャーを与えずに、自然な形で真意を探るための、効果的な質問術をご紹介します。

質問術①:検討のボトルネックを探る質問
「ありがとうございます。ちなみに、今後、社内でご検討を進められる上で、何か懸念事項や、弊社側で追加でご提出すべき資料などはございますでしょうか?
この質問により、相手が本当に検討を進める上で、何が障害になっているのか(例:価格、納期、機能など)を知ることができます。もし相手が「特に価格面ですね…」と具体的な課題を挙げてくれれば、それは真剣に検討している証拠(脈あり)であり、追加の提案のチャンスが生まれます。逆に、「いえ、特にありません」と曖昧な返事であれば、脈なしの可能性が高まります。

質問術②:次のアクションを確認する質問
「承知いたしました。差し支えなければ、今後の流れとしましては、どなたか別の方とお話しさせていただく形になりますでしょうか?
この質問で、相手が社内の誰を巻き込もうとしているのかが分かります。「次は、上司の鈴木に話を通してみます」といった具体的な名前が出てくれば、脈ありのサインです。「いえ、まずは私の方で」という返事であれば、まだ検討の初期段階か、あるいは話を進める気がないのかもしれません。

質問術③:期限を優しく設定する質問
「承知いたしました。それでは、来週の中頃にでも、一度、ご検討状況の進捗をお伺いするご連絡を差し上げてもよろしいでしょうか?
これは、相手に回答を強制するのではなく、「こちらから連絡しますよ」という形で、緩やかに期限を設定するテクニックです。相手が「ええ、お願いします」と答えれば、あなたは公式にフォローアップする権利を得たことになります。「いえ、こちらから連絡しますので」と相手が言う場合は、相手のペースを尊重し、待つ姿勢に切り替えましょう。

その後のフォローアップで成約率を高める方法

「前向きに検討いたします」という言葉を引き出した後、何もしなければ、その言葉は時間と共に忘れ去られてしまいます。成約率を高めるためには、戦略的で、かつ丁寧なフォローアップが不可欠です。

まず、商談や会議が終わった直後に、必ず「お礼メール」を送ります。その日のうちに、「本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。前向きにご検討いただけるとのこと、大変光栄に存じます」という感謝の気持ちを伝えます。そして、そのメールの中で、改めて、その日話した内容の要約や、相手が興味を示していたポイントを記載しておきましょう。これにより、相手の記憶を呼び覚まし、社内での情報共有を助けることができます。

次に、事前に約束したタイミングで、フォローアップの連絡を入れます。その際、「いかがでしょうか?」とただ尋ねるのではなく、必ず何か新しい情報や価値を提供することを心がけましょう。「先日お話しした件ですが、ご参考までに、類似の導入事例の資料をお送りします」や、「その後、〇〇という新機能が追加されましたので、ご報告です」といった形で連絡することで、あなたは単なる「催促する人」ではなく、「有益な情報を提供してくれるパートナー」として認識されます。

ただし、フォローアップは、しつこくなりすぎないように注意が必要です。相手の反応が薄い場合は、一度距離を置き、タイミングを改めてアプローチするなど、相手の温度感に合わせた、柔軟な対応を心がけましょう。

【NG例】信頼を失う「前向きに検討いたします」の間違った使い方10選

「前向きに検討いたします」は、ビジネスを円滑に進めるための便利な言葉ですが、その使い方を誤ると、相手に不誠実な印象を与え、あなたの信頼を根底から揺るがす「危険な言葉」にもなり得ます。ここでは、あなたが無意識のうちに信頼を失ってしまわないよう、具体的なNGな使い方を10の文例と共に詳しく解説します。これらの失敗例から学ぶことで、あなたはより誠実で、責任感のあるコミュニケーションを実践できるようになるでしょう。

検討する気がないのに期待させる(思わせぶりな態度)

これは、相手の時間を無駄にし、最も信頼を損なう、最悪の使い方です。断る勇気がないための、不誠実な先延ばしに他なりません。

NG文例1:(最初から採用する気がない応募者に対して)「素晴らしいご経歴ですね。ぜひ、前向きに検討いたします。」
解説:応募者は、この言葉を信じて、結果を待ち続けることになります。その時間と期待を裏切る行為は、応募者個人のみならず、会社の評判をも貶める結果に繋がります。採用の可能性がないのであれば、その場で「ご期待に沿えず申し訳ありません」と伝えるか、少なくとも思わせぶりな態度は取るべきではありません。

NG文例2:「前向きに検討します!」(と景気よく言ったきり、連絡を絶つ)
解説:その場を盛り上げるためだけに、安易にこの言葉を使うのは非常に無責任です。言ったからには、検討し、その結果を伝える義務が生じます。口先だけの対応は、あなたを「信用できない、軽い人物」だと印象付けます。

根拠なく安易に使い、言葉の価値を下げる

この言葉は、真剣な検討の意思を示すからこそ価値があります。何の根拠もなく、口癖のように使うと、その重みは失われます。

NG文例3:(相手の提案内容をほとんど聞かずに)「はいはい、分かりました。前向きに検討しておきます。」
解説:相手の話を真剣に聞いていないのが、態度で分かってしまいます。これは、相手の提案を軽んじている、非常に失礼な行為です。検討するに値しないと思うのであれば、「申し訳ありませんが、今回は弊社の方向性とは合わないようです」と、正直に伝える方が、よほど誠実です。

NG文例4:(どんな提案に対しても)「ありがとうございます。前向きに検討いたします。」
解説:誰に対しても、どんな案件に対しても同じ返事をしていては、「誰にでも良い顔をする、八方美人な人だ」と見なされます。あなたの「前向きに検討」という言葉は、やがて「断り文句」の同義語として、市場に認知されてしまうでしょう。

期限を伝えず、相手を無期限に待たせる

検討すると言った以上、いつまでに結果を出すのかを伝えるのは、最低限の責任です。

NG文例5:「前向きに検討いたします。結果が出たら、こちらから連絡しますので。」
解説:これでは、相手はいつまで待てば良いのか、全く分かりません。1週間なのか、1ヶ月なのか、あるいは1年なのか。相手を無期限の「待ち」という、不安な状態に置くのは、非常に不親切です。「来週中には、一度、中間報告をさせていただきます」など、具体的な期限の目処を必ず伝えましょう。

NG文例6:「前向きに検討いたしますので、しばらくお待ちください。」
解説:「しばらく」という言葉も、非常に曖昧です。人によって時間の感覚は異なります。相手を待たせるのであれば、その期間を具体的に示すのが、ビジネスにおける誠意です。

検討結果の連絡をしない、または忘れる

これは、NG文例1、2とも関連しますが、検討すると約束したにもかかわらず、その結果を伝えないのは、約束を破る行為であり、社会人として失格です。

NG文例7:「前向きに検討します」(と言ったが、結局、不採用の連絡すらしなかった)
解説:たとえ結果が「ノー」であっても、その結果をきちんと伝えるのが、検討を引き受けた側の責任です。「サイレントお祈り」などと呼ばれるこの行為は、相手の時間を奪い、企業の評判を著しく損なう、絶対にあってはならない対応です。

NG文例8:「前向きに検討します」(と言ったこと自体を、すっかり忘れてしまっている)
解説:検討すると約束した案件は、必ずタスクとして管理し、リマインダーを設定するなど、忘れないための仕組みを作る必要があります。約束を忘れるのは、相手の存在を忘れるのと同じです。

その他(上から目線、責任逃れなど)

NG文例9:(部下の提案に対し、上から目線で)「うん、まあ、前向きに検討してやらんでもない。」
解説:非常に傲慢で、相手を見下した言い方です。部下のモチベーションを著しく下げ、信頼関係を破壊します。たとえ上司であっても、部下の提案に対しては、敬意をもって「ありがとう。前向きに検討しよう」と応えるべきです。

NG文例10:「私の一存では決めかねますので、とりあえず前向きに検討、ということにしておきます。」
解説:自分で判断する責任から逃げ、決定を先延ばしにしているだけの、無責任な発言です。自分が決められないのであれば、「この件は、〇〇部長の判断が必要ですので、私から話を通しておきます」と、具体的な次のアクションを示すべきです。

「前向きに検討いたします」の言い換え・類語表現集|状況に応じた使い分け

「前向きに検討いたします」は便利な言葉ですが、毎回これ一辺倒では、あなたの意図が正確に伝わらなかったり、思考が停止しているように見えたりするかもしれません。ビジネスの洗練度は、語彙の豊かさに表れます。ここでは、「前向きに検討いたします」と同じような意味合いを持ちつつも、それぞれ異なるニュアンスを持つ言い換え表現をご紹介します。これらのフレーズを使い分けることで、あなたのコミュニケーションはより的確で、戦略的なものになります。

「鋭意検討いたします」とのニュアンスの違い

「鋭意検討いたします(えいいけんとういたします)」は、「前向きに検討」よりも、さらに強い意志と熱意を示す、非常にフォーマルな表現です。

ニュアンスの違い:「鋭意」とは、「意識を集中させ、熱心に励むさま」を意味します。つまり、「鋭意検討」とは、「全力を挙げて、集中的に、そして意欲的に検討します」という、極めて強いコミットメントを示す言葉です。「前向きに」が姿勢を示すのに対し、「鋭意」は行動の強度と集中度を示します。そのため、相手からの提案を非常に高く評価しており、実現に向けて本気で取り組む、という強いメッセージを伝えたい場合に最適です。ただし、その分、相手の期待値も大きく上がるため、安易に使うべきではない、重みのある言葉と言えます。

「社内で協議の上、改めてご連絡いたします」の具体的な表現

これは、「前向きに検討」という曖昧な言葉を、より具体的で、ビジネスライクなプロセスに落とし込んだ表現です。

ニュアンスの違い:「前向きに」という感情的な言葉を避け、「社内で話し合う」という、具体的な次のアクションを明示することで、検討が単なるポーズではなく、正式な業務プロセスとして行われることを相手に伝えます。これにより、相手は「ああ、本当に社内で検討してくれるのだな」と、具体的なイメージを持つことができ、安心感が高まります。「上司と相談の上」「関係部署と調整の上」など、「誰と」協議するのかを付け加えると、さらに具体性が増し、信頼性が高まります。

「検討させていただきます」のシンプルな表現

これは、「前向きに」という修飾語を取り除き、「検討します」という事実だけをシンプルに伝える表現です。

ニュアンスの違い:「前向きに」という言葉が持つ、相手への期待感を煽る効果がないため、より中立的で、冷静な印象を与えます。相手に過度な期待をさせたくない場合や、検討の結果、断る可能性も十分にあることを、暗に示唆したい場合に有効です。「検討させていただきます」という、「させてもらう」の謙譲語を使うことで、丁寧さは保たれていますが、肯定的なニュアンスは薄まります。相手との温度感を調整したい時に、便利な表現です。

その他の言い換え表現一覧と比較

上記以外にも、文脈に応じて様々な言い換えが可能です。それぞれの言葉が持つ微妙なニュアンスを理解し、状況に応じて最適なものを選択できるよう、一覧表にまとめました。

表現 ニュアンスと特徴 主な使用シーン
一度持ち帰らせていただきます 「その場では決められないので、会社に持ち帰って検討します」という、物理的な行動を示す表現。即決できない理由が明確になる。 会議や商談の場で、その場の結論を避ける際に、最も一般的に使われる。
熟慮のうえ、ご返答いたします 「熟慮(じゅくりょ)」は、「十分に考えを巡らせること」。「時間をかけて、深く考えた上で返事します」という、非常に真摯な姿勢を示す。 M&Aや人生に関わるような、非常に重要な決断を求められた際に、その重みを受け止めていることを示す。
参考にさせていただきます 相手の意見や提案を、今後の判断材料の一つとして受け取る、というニュアンス。採用するとは約束しないが、無下にもしない、という距離感。 顧客からの要望や、直接の取引関係にない相手からのアドバイスなどに対して、感謝を示しつつ、返答を保留する場面。
善処します(ぜんしょします) 「状況に応じて、うまく処理します」という意味。非常に曖昧で、政治家などが使う、言質を取られないための表現。ビジネスでは多用すべきではない。 顧客からの無理な要求に対し、明確に断れないが、安易に約束もできない、という板挟みの状況で、やむを得ず使うことがある。

これらの言葉の引き出しを豊かにしておくことは、あなたのコミュニケーション能力を一段上のレベルへと引き上げてくれるでしょう。

【メール編】コピーして使える「前向きに検討いたします」の例文集

理論を実践に移してこそ、スキルは身につきます。ここでは、日常のビジネスシーンで頻繁に登場する4つの具体的な状況を取り上げ、件名から署名まで、そのままコピー&ペーストして使える、完成されたメールの文例をご紹介します。これらのテンプレートを「型」として活用することで、あなたは日々のメール作成業務を効率化し、常にプロフェッショナルなコミュニケーションを実践することができるようになります。

提案や見積もりに対する返信メール

取引先から受けた提案や見積もりに対し、感謝を伝え、社内で検討することを伝える、最も基本的な返信メールです。

件名:RE: 〇〇プロジェクトの御見積書につきまして

株式会社〇〇
営業部 山田 太郎 様

いつも大変お世話になっております。
株式会社△△の佐藤です。

この度は、「〇〇プロジェクト」に関する御見積書を
早速お送りいただき、誠にありがとうございました。

内容、確かに拝見いたしました。

つきましては、お送りいただいた内容を基に、社内で前向きに検討を進めさせていただきます。

来週中には、一度、弊社としての見解をご連絡できるかと存じます。
取り急ぎ、拝受のご連絡と御礼まで。

引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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株式会社△△
企画部 佐藤 花子
(連絡先)
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採用面接の結果を保留する際の通知メール

採用面接後、応募者に対して、すぐには合否を伝えられないが、良い評価であることを伝え、次のステップに進む可能性があることを示唆するメールです。

件名:【株式会社△△】二次面接の結果につきまして

鈴木 一朗 様

この度は、弊社の二次面接にお越しいただき、誠にありがとうございました。
株式会社△△、人事部の佐藤でございます。

鈴木 一朗さんとのお話を通じて、これまでのご経験や、弊社事業への深いご理解に、
面接官一同、大変感銘を受けました。

慎重に選考を進めました結果、ぜひ次のステップにお進みいただきたく考えております。

最終的な役員面接の日程など、今後のプロセスにつきまして、現在、社内で調整しております。つきましては、誠に恐縮ながら、今しばらくお待ちいただけますでしょうか。詳細につきましては、前向きに検討の上、来週中を目処にご連絡いたします。

まずは、取り急ぎ二次面接の結果と、今後の流れについてのご連絡まで。

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株式会社△△
人事部 佐藤 花子
(連絡先)
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顧客からの難しい要望に対する一次回答メール

顧客から、すぐには実現が難しい、あるいは規定外の要望を受けた際に、無下に断るのではなく、まずは受け止める姿勢を示すための一次回答メールです。

件名:RE: 〇〇のカスタマイズに関するご要望につきまして

株式会社〇〇
山田 太郎 様

平素は弊社サービスをご利用いただき、誠にありがとうございます。
株式会社△△の鈴木です。

この度は、〇〇のカスタマイズに関するご要望をお寄せいただき、
誠にありがとうございます。

〇〇様のご要望、真摯に受け止めさせていただきました。技術的な実現可能性や、開発コストなどを踏まえ、弊社としてご期待に沿えるか、前向きに検討いたします。

誠に恐縮ながら、確認に1週間ほどお時間をいただけますでしょうか。
来週の金曜日までに、改めて弊社からの回答をご連絡いたします。

貴重なご意見をいただきましたこと、重ねて御礼申し上げます。

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株式会社△△
カスタマーサポート 鈴木 一郎
(連絡先)
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パートナー企業からの提携提案に対する返信メール

協業や提携の提案を受けた際に、その可能性を否定せず、しかし慎重に検討する姿勢を示すための、丁寧な返信メールです。

件名:業務提携のご提案につきまして

株式会社〇〇
事業開発部 山田 太郎 様

この度は、業務提携に関する、大変興味深いご提案をいただき、
誠にありがとうございます。
株式会社△△の佐藤でございます。

貴社の優れた技術と、弊社の顧客基盤を組み合わせることで、
大きなシナジーが生まれる可能性を、私どもも強く感じております。

つきましては、本件、取締役会にも上程し、全社的な視点で、前向きに検討を進めさせていただきたいと存じます。

まずは、ご提案いただきました内容につきまして、いくつか質問がございますので、
別途、お打ち合わせの機会をいただくことは可能でしょうか。

ご多忙の折とは存じますが、ご検討いただけますと幸いです。

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株式会社△△
経営企画室 佐藤 一郎
(連絡先)
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【英語編】ビジネスで「前向きに検討します」と伝えるには?

グローバルなビジネスシーンでは、日本語の「前向きに検討いたします」という、独特のニュアンスを持つ言葉を、英語でいかに自然かつ効果的に伝えるかが重要になります。直訳では意図が伝わりにくいこともあるため、状況に応じた適切なフレーズを覚えておくことが、円滑なコミュニケーションの鍵となります。ここでは、ネイティブスピーカーが使う、丁寧で説得力のある英語表現をご紹介します。

"We will consider it positively." の直接的な表現

これは、「私たちは、それを前向きに検討します」という意味の、最も直接的で分かりやすい表現です。"positively" が「前向きに、肯定的に」という意味になります。

使い方:相手の提案に対して、肯定的な印象を持っていることを、ストレートに伝えたい時に使います。シンプルですが、ビジネスシーンでも問題なく使えます。ただし、やや直接的すぎるため、相手に過度な期待を抱かせてしまう可能性も考慮する必要があります。

使用例:
"Thank you for your proposal. We will consider it positively and get back to you next week."
(ご提案ありがとうございます。前向きに検討し、来週、改めてご連絡いたします。)

"We will give it serious consideration." のフォーマルな表現

これは、「私たちは、それに真剣な検討を与えます」すなわち「真剣に検討いたします」という意味の、非常にフォーマルで、重みのある表現です。

使い方:顧客や取引先に対して、その提案を非常に重要視しており、真摯に向き合う姿勢を示したい時に最適です。"serious consideration"(真剣な検討)という言葉が、あなたの誠実さと本気度を伝えます。M&Aの提案や、重要な契約に関する返答などで好んで使われます。

使用例:
"This is a very interesting opportunity. We will give it our serious consideration."
(これは、非常に興味深い機会です。真剣に検討させていただきます。)

英語で返答を保留する際の文化的な注意点

英語で「検討します」と返答を保留する際には、日本とは異なる文化的な背景を意識することが重要です。

第一に、理由の明確化が求められます。なぜ即決できないのか、その理由を簡潔に説明することが、相手の理解を得る上で効果的です。「We need to discuss this internally.(社内で議論する必要があります)」や「I need to get approval from my boss.(上司の承認を得る必要があります)」といった一文を添えることで、あなたの返答は、単なる先延ばしではなく、正当なプロセスに基づいたものであると認識されます。

第二に、具体的なタイムラインの提示が、日本以上に重要視されます。「We will get back to you soon.(すぐに連絡します)」という曖昧な表現よりも、「We will let you know our decision by this Friday.(今週の金曜日までに、私たちの決定をお知らせします)」というように、具体的な期限を約束することが、信頼できるビジネスパートナーとしての標準的な対応と見なされます。

これらの点を意識し、より具体的で、透明性の高いコミュニケーションを心がけることが、グローバルなビジネス環境で成功するための鍵となります。

まとめ:「前向きな検討」を、次のビジネスチャンスに繋げるために

この記事では、「前向きに検討いたします」という、ビジネスにおける重要かつデリケートなフレーズを、あらゆる角度から徹底的に解説してきました。この言葉は、単なる便利な断り文句や、安易な肯定の言葉ではありません。それは、相手への敬意を示し、社内での慎重な意思決定プロセスを尊重し、そして未来の可能性を閉ざさないための、高度なコミュニケーション戦略なのです。

私たちは、この言葉が持つ「肯定的姿勢」と「決定の保留」という二面性を学び、その真意が、言葉そのものよりも、その後の具体的なアクションや質問に表れることを理解しました。そして、30もの具体的な文例を通じて、その応用範囲の広さを知り、逆に10のNG例から、信頼を失墜させる危険な使い方についても学びました。

この言葉はコミュニケーションの始まりである

「前向きに検討いたします」という言葉は、決して会話の終わりを意味するものではありません。むしろ、それは、本格的なコミュニケーションの始まりを告げる合図です。相手からこの言葉を引き出せたなら、あなたは、少なくとも、門前払いされることなく、検討のテーブルに着く権利を得たのです。

重要なのは、その言葉が出た後に、あなたがどのような行動を取るかです。相手が何を懸念しているのかを探り、その懸念を払拭するための追加情報を提供する。検討に必要な時間を尊重しつつも、適切なタイミングで、有益な情報を添えてフォローアップする。その地道で、誠実なコミュニケーションの積み重ねが、「検討」を「決定」へと導くのです。

誠実な対応が、最終的な信頼を勝ち取る

ビジネスの世界では、すべての提案が受け入れられるわけではありません。どんなに素晴らしい提案でも、タイミングや予算、あるいは企業戦略との兼ね合いで、見送りになることは日常茶飯事です。しかし、たとえ結果が「ノー」であったとしても、その過程であなたが示した誠実な態度は、決して無駄にはなりません。

「あの時の佐藤さんの提案は、今回は見送りになったけれど、その後のフォローが本当に丁寧で、信頼できる人だと思った。次の案件では、ぜひ佐藤さんに声をかけよう」。そう相手に思わせることができれば、あなたの「前向きな検討」は、たとえ実らなくても、未来への大きな種まきとなったのです。

言葉の裏を読み、言葉の表を丁寧に紡ぐ。そして、言葉だけでなく、行動で誠意を示す。その姿勢こそが、曖昧な言葉が飛び交うビジネスの世界で、最終的に揺るぎない信頼を勝ち取るための、唯一の方法と言えるでしょう。